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富山中央青果株式会社

産地と消費者をつなぎ、
富山の食を支えたい。

社会貢献できる仕事を探した

 長井一穂さんは2012年に東京の大学を卒業し、都内にある建設会社に就職。マンション建設の工事管理者として働いていた。いずれは富山にUターン就職したいという思いはあったが、東京でのサラリーマン生活は4年ほど続いていた。
 「毎日、始発で出勤して終電で帰る生活で、自分の時間はゼロ。季節感もなくなり、駅のホームでみんなが春服なのに自分だけダウンを着ていることに気づいた時は愕然としました。いつかは結婚したいと思っていましたが、こんな生活のまま家庭を持つ自分を想像することができませんでした」と長井さん。

 25歳の時、実家の祖母が他界したのを機に地元・富山に帰郷。転職先を探す前に転職斡旋業者を訪ね、就職活動について相談をした。そこでは「職場では何を優先するのか。収入なのか、自由時間なのか、遣り甲斐なのか…。どんなことに我慢できるのか、できないか」といった質問が書かれたアンケートに答えた。
 すると、アドバイザーから「長井さんは仕事内容より、地域や社会の役に立つことに喜びを見い出す人だと思います。社会貢献できる仕事という観点で探してみたらどうでしょう?」と言われたという。  

 早速、食品メーカーや薬の販売業者など、生活に密着したものに関わる企業をリサーチ。数社を見学した中でピンと来たのが富山中央青果だった。仕事内容は青果物の卸売り。国内外の産地から青果物を集荷し、仲卸業者や小売業者、大型店のバイヤーに販売する仕事だ。
 「富山の食を支える仕事。地域の人々にとって、なくてはならない仕事…。ここでやってみようと思いました」

現在はキノコ類全般を担当。チームリーダーとして部下の育成にも取り組んでいる長井一穂さん。「生産者と消費者をつなぎ、安心・安全な富山の食を支えます」。
現在はキノコ類全般を担当。チームリーダーとして部下の育成にも取り組んでいる長井一穂さん。「生産者と消費者をつなぎ、安心・安全な富山の食を支えます」。

生産者と販売者をつなぐ仕事

 入社後は約半年間、見習いとして先輩の指導を受けた。先輩とペアになり、発注から入荷、配送までの流れを学んだり、取引業者に挨拶に行ったりし、その後、配属先が決まった。長井さんは菌茸(きのこ)全般を担当することになった。

 当然ながら市場の朝は早い。長井さんの1日は早朝4時にスタート。出社後はまず倉庫に行き、商品がオーダー通りに届いているか、品質が確かなものかを確認。6時過ぎから伝票処理を行い、8時半頃から社内で打ち合わせ。9時からお昼頃まではメーカーや産地と電話商談やウェブミーティングをこなし、合間を見て昼食。午後1時頃から翌日の準備を行い、2時過ぎには退社という流れである。

 全国各地の産地とやりとりをしながら、新しい産地を開拓したり、生産者と小売業者をつないだりするのも長井さんの仕事だ。
 「前任者からこの仕事を引継いだ時、ある業者の当社に対する年間売上が9000万円前後でした。自分が担当になって2年目、地元スーパーに「カットしめじ」を積極的に売り込んだところ、販路が広がり、年間売上が1億円を超えました。すごく喜ばれ、大きな達成感を実感しました」

 また3年ほど前には、富山市内にある福祉作業所が栽培する椎茸を地元大手スーパー「アルビス」にもちかけたことで販売ルートが確立。これにより福祉作業所は安定した椎茸栽培ができるようになった。結果として、障害のある人たちが農業を通して社会参画する「農福連携」を支援すると同時に、アルビスが目指す地域密着・地産地消にも貢献することができた。
 「自分が携わった商品がスーパーに並び、お客様が手に取っていくのを見るのは嬉しいし、努力した成果が数字になって出るのは大きな励みになります。もちろん、うまくいかない時もあります。そんな時は一人で悩まないで同僚や先輩に相談します。しゃべっているうちに根本的な原因に気づいて、解決策が見えてくることが多いです。時々立ち止まったり、振り返ったりすることは大事ですね」

帰宅後は子供との時間を満喫

 プライベートでは、職場で知り合った事務職の女性と結婚。現在は3歳半の女児の父親として子育てに奮闘している。
 「保育園の送迎は夫婦で分担しています。行きは妻が朝7時半に保育園に送って、帰りは私が会社帰りにピックアップしています。残業があっても15時前には退社できるのでお迎えにはちょうど良い時間です。この時間に退社するのは歯医者に行ったり、本屋に寄ったりできるので便利なんです」と長井さん。

 Uターン就職をして6年。やりがいのある仕事と温かい家庭を手に入れ、自分らしいライフスタイルを確立した長井さん。これからの目標は…?
 「まずは今年中に営業責任者になることですね。一昨年、チームリーダーになって2人の部下と一緒に頑張っています。コロナ禍で売り上げが落ち込んでいる商品もあるので、売上増に向けてアイディアを出し合っています。少し先の目標としては、県内で新しい産地を開拓すること。富山県は野菜自給率が非常に低い“野菜輸入県”なので、地産地消の拡充に取り組んでいきたいです」