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立山科学グループ 

仕事に集中できるのは
日々の暮らしが潤っているから。

念願の仕事を見つけて富山へ

 「実家は千葉、大学は東京。就職を機に見知らぬ土地に来たという感じです」と微笑みながら話し始めた新川真以さん。縁もゆかりもなかった富山での就職を決めた背景には、研究開発職に対する強いこだわりがあった。
 きっかけは中学時代。理科の実験で味わった発見や感動が、化学の道に進む原動力になったという新川さん。大学は理工学部に進学し、主に油の材料研究に取り組んだ。

 就職活動では食品や化粧品メーカーの研究職を探したが、研究開発職は大学院卒を採用する企業が多く、大学生の新川さんには想像以上に門戸が狭いことがわかった。
 「同期が決まっていく中で焦りを感じましたが、絶対に諦めたくなかった。私は品質管理や調査ではなく、開発の仕事がしたい。ずっと実験をしていたい…。そう思いながら求人サイトを調べていたら、たまたま当社の求人が見つかったんです」

 ホームページを見る中で、当時、立山科学グループ全体の研究開発部門である技術本部が取り組んでいた「畜光材を用いた新規事業の研究開発」に目が留まった。ここなら研究開発の仕事ができると思い、早速、会社訪問と面接試験に挑んだ。訪問して感じたのは「グループ全体は大きな組織だけど、一つ一つの部門は小さく、少数精悦主義。自主的に動き、結果もダイレクトに返ってくるから、やりがいもあるはず」という期待感。新川さんは迷わず、入社を決めた。富山までの距離は関係ないと思った。

立山をバックにした新川さん
千葉県出身。東京の大学を卒業後、富山にIターンした新川真以さん。「富山の一人暮らしは5年目、満喫しています。雪道の運転だけは慣れないけど…」

責務が大きい分、やりがいも大きい

 入社1〜2年目は技術本部で「畜光材」の材料研究を担当した。「畜光材」とは、明るい時に受けた光を蓄え、暗所でも発光する物質で、様々な用途で付加価値を高めることができるものだ。新川さんは大学時代に学んだ有機溶剤の知識を生かし、実験やデータ解析に勤しんだ。また、2カ月に1回ほどの頻度で東京で開催される展示会にも出向き、新しい情報を収集した。

 4年目からは、グループ内でチップ電子部品の開発・製造を行う、(株)立山科学デバイステクノロジーの、厚膜チップサーミスタの研究開発部門に異動した。サーミスタは温度変化で抵抗値が変化する電子部品で、家電製品などの温度センサとして使われるものだ。新川さんの担当はこの部品に使われるペーストの材料研究。既存品の製造と新製品の試作という2つの業務があり、それぞれの納期を確認しながら計画的に進めている。
 「ペースト調合は温度や湿度などで変わります。繊細な和菓子を作るような感覚なのかもしれませんね」と新川さん。仮説を立て、予想通りの結果が得られた時は、心が踊るような満足感があるという。
 「ある時、上司から“ペーストに用いる材料がやがて廃番になるから代替品を探してほしい”と言われ、成分分析し、類似したサンプルを取り寄せたり、試作したりしました。何とか代替品を調達できた時は大きなやりがいを感じました」

 新川さんの仕事は基本的に単独業務。分からない点は上司に相談して問題解決したり、材料メーカーの担当者に教えてもらったりしながら進めている。
 「他社に就職した大学の同期は、今も製造現場だったり、下積みをしている人がほとんど。ここまで一人で判断し、メーカーと直接交渉できる仕事は他社にはないですね。責任は大きいですが、面白味のある仕事だと思います。将来的には、顧客ニーズをリサーチしながらマーケットインの商品開発をしたいと思っています」と新川さん。

ゆったりとした時間が流れる富山

 富山に移住して5年。今は職場からほど近い距離にあるアパートで一人暮らしをしている。「学生時代は満員電車に乗って大学に行き、夜遅くに帰宅する毎日。往復2時間近い通学が苦痛で、いつも疲れていました。今は自宅から10分ほどのマイカー通勤なので快適です。富山の暮らしは何事にもゆとりを感じますね。人もやさしいし、食べ物もおいしい。私に合っていると思います」と微笑む。

 立山科学グループは工場が点在しているため、業務で関わる社員の数は限られてしまう。このため社内サークルを設け、交流の場を提供している。「私はマラソン、バドミントン、料理、カメラのサークルに入っています。カメラサークルでは先日公園に集合して撮影会を楽しみました。普段は一人で仕事をしているのでリフレッシュになるし、趣味の幅も広がってプライベートが充実しました」

 このほかの活動では昨年、グループ全体でSDGsに取り組み、昨年「富山県SDGs宣言」を実施した。上層部が主導するのではなく、社員一人ひとりが自主的に取り組むスタンスが定着しているという。
 「ワークライフバランスも良く、女性活躍をサポートしてくれる職場なので、将来、結婚をして、子育てをすることになってもずっと働き続けられそうな感じです。いろいろな経験を積みながら、研究者としても、働く女性としても成長していけたら…」。
 富山の豊かな自然と穏やかな職場環境が、新川さんの心を潤し続けているようだ。